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お読みいただく前に&パスワード&Index
- 2026/01/01(Thu) -

はじめまして。

Gipskräuter<ジプソクラウター>です。


お越しいただきありがとうございます。


花より男子の二次小説を書いてます。
CPは総二郎×つくしです。


始めは読むだけだったんですけどね。

西門さんとつくしちゃんの、私の中ではあり得ないCPにいつしかどっぷり嵌まってしまいまして。ヘヘっ。

ある日ふと浮かんだ設定で無謀にも書き始めてしまった次第です(汗)

しかも、書き出しは浮かんだんですけどね。あとは、行き当たりばったりでそれぞれに勝手に動いてもらってます(笑)
なので、収拾作業が大変です(´-ω-`)


どの作品も、誰もがハッピーエンドを目指して頑張りまーす。


お話が完結するまではアップしない方針です。その代わりに、創作日記なるものをご用意しておりますので、そちらも覗いていただければ嬉しいです。


誤字脱字等多いかもしれませんが、お楽しみいただければ幸いです(*´∇`*)



最後に。


こちらはあくまで私の趣味のお部屋で、原作者様、他関係者様とは一切関係ありません。


誹謗中傷、荒らし等はご遠慮いただきますよう、宜しくお願い致します。


なお、駄文ではありますが著作権は放棄しておりませんので、転載、配布、二次使用等はご遠慮くださいますよう、宜しくお願い致します。



★パスワードについて★ 追記有り

★Index★



Gipskräuter
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大安吉日 by GPS
- 2018/10/17(Wed) -





「今年の夏は暑かったよね」
「ホントだよねー!すっごく暑かったね、花沢類」

「……今年の冬は寒いのかな」
「どうだろ?冬だから当然寒いんじゃない?」

「俺、牧野がいたら寒くないかも…この冬からさ、ずっと一緒にいない?」
「……それって」


秋になってそんな話になって、牧野が泣きながら「うん!」って返事くれて晴れて恋人になったのは先月のこと。
内心ドキドキしてて掌に汗までかいてた俺は返事もらうまでの1分間が凄く長かった。

うん!の後にはホッとして、大学のキャンパス内だったのに牧野を思いっきり抱き締めて、その場でキスして怒られたっけ。
くすっ、だって最高に嬉しかったんだもん。


そんな俺達の初めてのデートの日…今日は10月17日。


待ち合わせしたのは牧野の希望で何故か有楽町駅前。
何でこんな所なのかわかんなかったけど場所なんてどうでもいいんだ。

なんたって初デート!これまでの友達としてのお出掛けじゃなくて恋人としてのデートなんだから。
ワクワクしながら約束の時間の30分も前からぼーっと駅前に立ってた。


まだかな…まだかな……まだかな。
くすっ、馬鹿だよね、俺。いつも会ってるのにさ。


そして約束の時間の3分前、通りの向こうから凄い勢いで走ってくる牧野を見つけた。
あんなに真っ赤な顔して髪を振り乱して、おまけに両手をブンブン振っちゃって。

そんなことして走ったら転けちゃうから急がなくていいのに…そう思った瞬間本当に転けたから驚いた。


「あいたたた、お待たせ~!花沢類、早いんだねぇ!」

「…ううん、今来たとこ。全然待ってないよ。って言うか大丈夫?あんた、本当にドジだよね…」

「あははは!大丈夫だよ!…じゃあ行こうか!」

「うん。牧野、今日は何処に行きたいの?」

「えっへへ!今日はね、ハロウィンジャンボ買いに行くんだよ!凄いでしょ?頑張ってバイトしたんだもん!」


え?ハロウィンジャンボ?……牧野が宝くじ?


「そんなのいらないでしょ?」
「なんで?」

「俺がいるじゃん」
「……」

「どうして買うの?そんなにお金がいるの?」
「いや、そういう意味じゃなくてね」

「じゃどういう意味?なんでハロウィンジャンボ買うの?」
「えっと、だから、その…夢を買うっていうか」

「えっ!夢って買うものなの?叶えるものじゃなくて?」
「あっ、だからそうなんだけど…」


牧野の説明だとこの先にある西銀座の販売所で、毎回1等ってのが多く出てるらしい。
だからわざわざそこで買うんだって。しかも今日ってのも意味があるんだとか。

「あっ、あのね販売期間中の大安の日が1日、7日、11日、17日、23日なの。
その中でもね、一粒万倍日って大安よりいい日があってね、それが7日と17日でしょ?
寅の日もいいんだけど、1日と13日なの。
でね、もう過ぎちゃった日もあるから今日の17日が1番いいのよ!」

「…俺との初デートは宝くじのために日にちと場所が決まったの?」

「…そ、そうかも」


…………。

なんでだろう…宝くじに負けた気がする。


そんなにも牧野の心を釘付けにしたの?あの1枚300円の紙が?
牧野はそんなに欲しいの?一生懸命働いたお金を使ってまで宝くじを買いたいの?

そんなに…そんなに?!


「牧野…何枚買うの?」
「えっとね、今回は奮発しようと思ってるの!」

「奮発?!何百枚買うの?!」
「え?…じゅ、10枚…かな?あっはは!」


10枚?……買うって10枚なの?!
それで牧野は夢を買うって気分になるの?

9000万枚の中から1等3億が9本、その前後賞が各1億円で18本。
それなのに10枚でどーするの!!当るわけないじゃん!!


「よくわかんないけどわかった…牧野がそう言うなら俺が行く!」
「は?花沢類、ど、どうするの?」

「いいよ。初デートの記念だと思えば安いもんだよ。販売所に残ってるもの全部買って来る!」
「ええっーっ!!ちょ、ちょっと、花沢類、待って!」


この後俺は西銀座まで走った。
少しでも早く行かなきゃ!牧野のために!


そしてゼィゼィいいながら販売所のお姉さんに向かって言った。

「残ってる宝くじ全部買う……いくら?」
「あっ、そのうちの10枚は私が払うね!」


「えっ!残ってるの全部ですか?2億5千万円ですけど?!お客様っ?!」

「カード、使える?」
「げ、現金のみです!」

「わかった。30分で届けさせる」
「あっ、ありがとうございましたー!!」


何故だろう……宝くじに勝った気がする♥



この後約83万枚のハロウィンジャンボ宝くじを花沢に届けさせて晴れて初デートに向かった。

「ねぇ、花沢類。3000円も臨時出費があったから公園のベンチで缶コーヒーでもいい?」

「…………うん」


宝くじに勝った気になり、ベンチで缶コーヒーを啜る。
初めてのデートも、考えてみれば一粒万倍日で、大安よりもイイ日らしいし?
牧野の弾ける笑顔も堪能出来たし♪空は青いし♪

─最高ーーー!!

ベンチの背凭れに体重を預けて、流れる雲を暫し眺めているウチに、ふと計算してしまった。
……………………あれ?


─9000万枚のウチの約83万枚って…


「………牧野……」

「ど、ど、どうしたの?そんな怖い顔して」

「……足りないんだ」
「行くよっ!」

「えっ!どこ?なに?」

「いいから走って!あと、宝くじが買えるのはどこ?」

「えっ、えっ、えっ?!」

「他人に買われたら、確率が下がる」


「えぇぇーーーー!!」


コレってそんなに叫ぶこと?
それより!


「ねぇ、販売所どこ?」

「ちょ、ちょっと待って、類!!」

「何?
早く買わないとその分確率が下がっちゃう」

「あのね、類。
ちょっと落ち着いて?」

「………」


俺よりあんたの方が落ちつきないと思うんだけど…?

がっしりと掴まれた腕には力がこもってるし、何その百面相?
睨んだり視線を外して宙を見上げたり、ぶんぶんと勢いよく顔を振ったり…。

まぁ見てて飽きないけどね♪

でも今はハロウィンジャンボを買いに行かないと!

「牧野」
「あのね、類!」

先を急ごうとする俺に牧野が言葉を重ねた。

「宝くじってみんなの夢なの。
類が全部買い占めちゃったら……買いに来た人ががっかりするでしょ?
だから…やめよう?」


だってあんたの夢でもあるんだよ?
それを俺が叶えてあげたいんじゃん!
そう言おうと思ってたのに、牧野は更に言葉を重ねて来た。


「また買い占めちゃうつもりでしょ?
もうたくさん買ったし、よく当たる販売所だから当たるかもしれないし……。

そ…それにね……。

えーと…その……」


必死で俺を止めようとしてたくせに、なんで急にそんなもじもじしてるの?
顔だって真っ赤じゃん。


「それに…何?」

黙ってようと思ったのに続く言葉が気になってついつい口にしてた。


「宝くじを買おうとしてるお金…。外れちゃったらなくなっちゃうんだよ?

無駄遣いはよくないけど……。
だったら…二人でいろんな所に遊びに行きたい……」

「俺と…?

二人で……?」

「………うん」


何それ……。
可愛すぎじゃない?


「分かった。
宝くじはもういいや。

どこ行きたい?」


「あっ私ね、美味しいお店調べて来たの!
そこに行きたい!」

「じゃ、行こっか♪」


やっぱり宝くじより俺だよね!
よかった♪



にこにこしながらスマホを出して店について話す牧野。


けど俺は全然別のことを考えてるんだよね。
もちろんこれから行く所も楽しみなんだけどさ。あんたと一緒だし。


でもね、牧野。

俺が宝くじに使おうとしてた金額分かってる?

くすっ。

ほんと楽しみだね♪♪





おしまい




こんにちは~♪


いかがでしたでしょうか?
GPS……初始動です(笑)

もう分かりました?

Gipskräuter
plumeria
sorairo

3人あわせてGPSなんです♪♪
新しいサイトさんじゃなくてごめんなさい~!
でも笑って許して~(笑)


そもそもの事の起こりは空さんとGipの個別ライン。

頂いたお話の続きを書いて書けないの押し問答(笑)

空 自宅の部屋…
G つくしちゃんハロウィンジャンボを買う、とか?
空 書いて!
Gip、三行のみ書く 終了(笑)
空 プルさんに振れば…続き…
Gip、プルちゃん宅を襲撃

という感じでプルちゃんを巻き込みお話が出来上がりました(*´艸`*)

もちろん三行で見逃してくれるはずもなく…追加で書きました…。
空さんも書いてます♪


さて…GPS……。
次の発動はあるのでしょうか…?
空プルコンビ…怖いです(笑)

もう一度言っちゃいます。
空プルコンビ怖いんです(笑)

空さん、プルちゃんお手柔らかにお願いします…とここに書いておこう…(*´艸`*)

何はともあれ…楽しんでもらえれば幸いです♪♪
お付き合いくださりありがとうございました(*`・ω・)ゞ



Gipskräuter



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『七度目の冬~パパと呼ばれた日?~』~空色サマからの頂き物~
- 2018/10/10(Wed) -

『七度目の冬~パパと呼ばれた日?~』
(続々 四度目の秋祭り)



朝晩の冷え込みが確実に冬に向かってると感じる様になって来た。

それでも、邸の庭に面した縁側は陽が当たると暖かく、最近はそこで可愛さを増した娘を膝の上に乗せて二人の時間を楽しむのが、日課になりつつある。

三ヶ月程前に一歳の誕生日を迎えた娘のかすみ。
見るもの聞くもの全てをスポンジの様に吸収するのだろうか?
母親であるつくしと共に観る、幼児向けのテレビ番組のキャラクターがお気に入りの様で、初めて発した言葉はママでもパパでも無く、『わんわん♪』だった。
犬も猫も、金魚も鯉も、神社の鳩も庭の雀も…全て『わんわん♪』

─何故だ……

あぁ、後は『まんま(食べ物)』も言えるんだったな、『美味しいねぇ♪』『ごちそうさま』のジェスチャー『ねぇ~♪(斜め45度弱)』が付いてて頗る可愛い。
そんな処は、あいつにそっくりで笑える。

今日は昼飯直前の稽古が休みになり、思いがけずこんな風に娘とマッタリタイムを満喫中だ。

かすみが、早く次のページに進めとせがむ。


「ん、んっ」

「はいはい、いないない…」

「だぁー♪きゃ♪」

「…かすみ…だぁーじゃなく、ばぁーな」

「だぁーー♪」


司が送って寄越した誕生日プレゼントの中の一つに、かすみがお気に入りのキャラクターの絵本があった。
そのキャラクターや色々な動物が『いないない ばぁ』してる絵本。

かすみの誕生日当日に帰国出来なかった司が、二週間程遅れで我が家に現れた時の出来事。
その絵本を持って司の膝の上に納まったかすみに司が読み聞かせると言う珍しい状況。
その時の司とつくしの会話を思い出す。


***


「道明寺っ!もっと優しく読めないのっ!!」

「あ"ぁ」

「かすみが涙目になってるわよっ」

「……わりぃ」

「見た目も声もデカいんだから気を付けてよ」
「そもそも!だぁー。じゃないからね。ばぁー。だし」

「…こまけぇ事言うなよ」

「細かくないわよっ!嘘 教えてどうすんのよ」


***


かすみは頭上で繰り広げられるやり取りを不思議そうに眺めては、
だぁー。だの、ばぁー。だの言ってるのを聞いてたんだよな……、
どうやら「だぁー」でインプットされちまったらしい……。

─あの時の あれが原因だな……


「ん、んんっ」

「ん?今度はなんだ?」

「あーぁ」

「庭か?お外に行きたいのか?」


かすみは 俺の膝から下りると、じぃじとばぁばに買って貰ったファーストシューズを得意げに持って来る。
縁側に座り込み、履かせてくれと、満面の笑みだ。

─こんな風に靴を履かせてやれるのも、あと少しなんだろうな…


「わんわん♪」

「かすみ、わんわんは居ないだろ…」

「わんわん♪わんわん♪」

「おいっ!転けるぞっ!」


かすみを追いかけようと振り向けば、
フランスに居る筈の類に、抱き上げられていた。


「類っ!お前何時帰って来た?」

「うん?さっき?」


エールフランスで お昼12時過ぎに羽田着、lunchをすっ飛ばして来たらしい…


「……お前さ、連絡くらい寄越せよ」

「総二郎に会いに来たんじゃないもん、つくしには連絡したよ?」
「ね~、かすみ♪」

「ねぇ~♪(ジェスチャーのみ)」

「かすみは可愛いね♪るいだよ、る・い♪」

「うぅ~」

「そうそう、るい♪」

「わんわん♪」

─なんでだか、会話が成立してるっぽく聞こえるのが、不思議で仕方ない。


「お昼ご飯だよ~、あれ 類、早かったね」

「うん、ダッシュで来ちゃった♪」

「類……ダッシュさせたの間違いでしょ?」
「また運転手さんに無理させたんじゃないでしょうね…」

「………かすみに会いたいし、つくしのご飯食べたいし…」

「うふふ、調子いいんだからっ。さ、上がって」


─だから、類よ…。ここは、お前のウチじゃねぇだろうよ……
─つーか、俺に連絡寄越せよ…


その後、類は俺の愛妻つくしの手料理をたらふく食って、かすみと遊びまくり、
そのまま かすみとお昼寝に突入しそうな処で、迎えに来た田村さんに強制連行されて名残惜しそうに帰って行った。
最後に、『こっち勤務になったから、何時でも来れるよ!かすみ♪またね♪♪』
玄関先で爆弾投下して行きやがった。


─すげぇすげぇイヤな予感が……する…
─司までこっち勤務にはならねぇよ…な?


***


夕食後、
今日は沢山遊んで疲れたよね?
早めにお風呂に入ろうね。と、
かすみの手を引き俺達の部屋までの、長い廊下を三人で歩く。


「ねぇ、総…星が綺麗に見えるね」

「あぁ、もうすぐ冬になるな…」

「…綺麗ね…」


見上げれば、都会では珍しい程の星空。
まだ、冬の星座が顔を出してはいないが、
綺麗だ。


「さぁ、かすみ パパとお風呂に入ろうか?」

「…パッ……パ……」

「「……………」」

「お、おいっ!今、パパって言ったよな?」

「……そうかな?たまたまじゃない?」

「間違いねぇ、パパと言った」

「……どうかな?たまたまだと思うけど?」
「まんまがママって聞こえるのと、変わりなくない?」

「何がパパって聞こえるんだよっ、パパはパパだろ」

「あはは」


つくしには「たまたまじゃないかなぁ~」なんて、悲しい事を言われたが……、
絶対!!!パパだっ!!!!


我が子にパパと呼ばれる事が、こんなにも嬉しいとは思いもしなかった。


─天にも昇る……とは、この事だ


かすみが大きくなったら教えてやるんだ、
俺の事を初めてパパと呼んだ日の事を。
冬の始まりの星の綺麗な夜の事を。

ママにプロポーズして yes の返事を貰った時と同じくらい、
嬉しくて泣きそうになったと。


─なぁ、かすみ。急いで大きくなるなよ




……………………by 空色🍀

********

Gipskräuterさま

総ちゃん&類イベント『summer festival』では、大変大変お世話になりました。
相も変わらずのポンコツ振りにも拘わらず、笑って許してくれて……

ありがとうーーーヽ(*´▽)ノ♪

笑って、笑っての数ヶ月を過ごす事が出来て、とても楽しかったです。
大迷惑の呟きに付き合わせて、ごめんね💦と、沢山のありがとう♪を込めて…。
相変わらずのお粗末作文ではありますが、
ご笑納下さいませ。

これからも、ずぅーーーっと!
宜しくお願い致しますm(__)m🍀


空色サマのお部屋はこちらからどうぞ (*´∀`)つ


※パスワード制です




こんにちは~!


とある日のこと。
空色サマからラインが入りました。

あら?
どうしたのかしら?

なーんて思いながらラインを開くと…。

『七度目の…』の文字が!!

うおぉ~!!
続きだ~っ!!

もうめっちゃ大喜びでした(*´∀`)♪

ということで、今日はその頂き物のお届けでした♪

空色サマの総ちゃん×つくしちゃん
可愛いですよね~(//∇//)



空色サマ

こちらこそイベントでは大変お世話になりました(*´ω`*)
何時もこんなポンコツに付き合ってくれてありがとね~!
これに懲りず……また一緒に何かやろうね♪
1人確保…!(●´艸`)ムフフ


うふふ~。
総ちゃんにパパ記念日?作ってくれてありがと~(//∇//)

目に入れても痛くないほど可愛いかすみちゃん♪
総ちゃん感動ものよね!
なのにつくしちゃんの反応は薄い薄い(笑)
でもそれが空さんらしくて?(笑)とっても好きです♪

いつも可愛いお話をどうもありがとう♪♪


Gipskräuter

この記事のURL | 七度目の冬~パパと呼ばれた日?~by 空色サマ | CM(6) | TB(0) | ▲ top
『蝉』~高い壁~10
- 2018/10/05(Fri) -

あの忌々しい夜から数ヶ月。

つくしちゃんにあの日のことは話してない。
約束を破るのは気がひけたが、それでもやっぱり知らない方が幸せなことだってあるはずだ。

俺は俺なりに考え、出来ることは実践あるのみという、らしくもないことする日々を過ごしていた。

再会したあの日から自分でいうのも難だがえらく品行方正になったと思う。

くだらない遊びはやめたし、家のことも今までにないくらい真面目に取り組んでる。

つくしちゃんの稽古は一進一退だけど、それでも吸収は早い。
もっと言えば俺仕込み。
これで上達しない方がおかしい。

めきめきと腕を上げるつくしちゃんを見る目は今ではだいぶ変わったように思える。

何より…俺も知らなかったことで最近気づいたことなんだが、つくしちゃんは相当な人たらしみたいだ。

この数ヶ月であっという間に使用人のほとんどを味方にしちまったんだから本当にたいしたもんだ。

まぁ…あの花のような笑顔と無邪気さと優しい心。
それを持ってすれば当然の結果なんだろう。

もしかしたらその調子で西門の人間の心を変えちまうかも…?なんてことをしばしば考えなくもねぇ。
いやいや…そこは俺がしっかり切り開いていくべきだろう!!なんて一人突っ込みを入れつつ、今日もつくしちゃんとの待ち合わせにラウンジに向かう。



「よっ、総二郎!
今日は遅かったな?」

ラウンジに足を踏み入れればあきらがそう声をかけてきた。

「そうか?
つーか、なんでお前らこう毎日毎日ここに揃ってんだ?!」

つくしちゃんが座る席を空け、それを囲むような姿にいつもながらに腹が立つ。

「ああっ?
どこにいようと勝手だろっ!」

反発しながらもそわそわした様子で階段を一点にみつめる司。

「そう言うなよ?
誰かさんの付き合いは悪くなったし、遊ぶ気分でもないんだからさ。」

にやっと笑うその顔が問題なんだよ!
つくしちゃんで遊ぶ気満々じゃねぇか!!

「…うるさい。
寝てるんだから静かにしてよ。」

類!!
寝るならとっとと家に帰りやがれ!
わざわざここで寝ることねぇだろ!
見え見えなんだよっ!


そう。
こいつらもつくしちゃんの人たらしに魅せられた中の一人。

どうにかこうにかつくしちゃんと接点を持とうと毎日ここに集まってくる。
とんだ暇人だ。


「総ちゃん、お待たせ~!!」

いつものようにラウンジにつくしちゃんの明るい声が響いた。

「うるせーのが来たな。」
「よっ、牧野。」
「遅かったね。」

つくしちゃんは俺の元へとまっすぐにやってくるのに、幼馴染みは立ち上がりわらわらとそれを邪魔する。

まさかこいつらのこんな姿を見ることになるなんて思ったこともなかったし、こんなにも人は変わるもんなのか?と笑いが込み上げる。

けどよ?
つくしちゃんは俺の彼女だっつーの!!

群がる幼馴染みを押しやって、つくしちゃんと視線を合わせた。
耳元まで顔を下げてたった一言。

「逃げんぞ!」

「うん!」

つくしちゃんはにっこり笑って大きく頷いた。

「おっおいっ!」
「てめーらふざけんな!」
「つまんないの。」

後ろにそんな声を聞きながらつくしちゃんの手をぎゅっと握りしめた。


まだまだ問題は山積み。
きっと一難去ってまた一難…そんな日が続いて行くんだろう。

でも今はこれでいいんだ。




困難にぶつかる度、力を合わせてそれを乗り越えようと立ち向かう総二郎とつくし。

困難を乗り越えた先には笑顔溢れる楽しい日々が待っている。

つくしはともかく総二郎はそんなことなど露ほどにも思っていない。
が、彼らは無自覚ながらそれを実行に移している。

そしてそんな二人にはとびきりの明るい未来が待っている…はず…!



fin


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『蝉』~高い壁~9
- 2018/10/03(Wed) -

部屋に残るは俺とお袋の二人だけになった。

「わざわざ親父に報告か?」

何も言わねぇお袋に痺れを切らしてそう問いかけた。

「あら聞き捨ての悪いことを仰るのね。
単なる世間話でしょう?
それに話を持ち出したのはあの人よ。」

「はっ?」

「総二郎さんが珍しいことをなさったから家中その話で持ちきりになっているのよ。」

マジか………。
まぁ…そうなる…よな。

「で?お袋はどう思ってんの?」

くすくす笑うその表情に嘘はなさそうだが、それとつくしちゃんの件とじゃ話が違う。

元々隠す気はなかったがお袋の対応はどうも解せない。情報は少しでも多い方がいいに決まってる。

「もちろん驚いたわよ。
お会いして更に驚きましたけどね。
だってそうでしょう?
総二郎さんったらああいう素朴な方がお好きなのね。」

相変わらず頬を緩めながらそんなことを言い出した。

質問の意味が違うっつーの。
誤魔化してんじゃねぇよ!!
なんだってこの年になって母親とこんな会話をしなきゃなんねぇんだよ!

心の中で毒づいて睨み返すとその顔から笑みが消えた。

「本気なのは伝わりましたけど難しいでしょうね。」

「あんな笑顔で期待持たせておいて結局そう来るんだな?」

俺はいい。
この人たちを十分理解してるつもりだ。
でもつくしちゃんは違う。
さっきだって嬉しそうにお袋のことを話してた。
当然こんな風になってるなんて想像もしないだろう。

「でも……あの瞳は好きですよ。」

続けてそう言ったお袋の表情はやっぱり変わんねぇ。

「ふーん?」

態度と言葉は結びつかない。
けれど親父と違って完全拒否…って訳でもなさそうだ。

「ま、好きにするわ!」

これ以上何を話しても情報は得られないと思いソファーを立ち上がり部屋を出ようとした。

「総二郎さん?
お茶を教えるのよね?
他にもやることがあるんじゃないかしら?」

振り返りその言葉の真意を探ろうとしても、相変わらずにこりともしない顔があるだけ。

「スケジュールの変更はしませんからね。」

更にそう言って立ち上がると俺の横を「おやすみなさい」と微笑んで通り抜けて行った。

くっそ!!
なんだって言うんだよっ!



自室に戻ってソファーへと体を投げた。

目を瞑ればつくしちゃんの楽しそうな顔が浮かんでくる。
何があってもあの笑顔だけは守りたい。

想像通り歓迎とはいかねぇ二人を前に出来たのは、ほんの数年の猶予だけ。

俺にあの笑顔は守れんのか?
いやいや…手放せねぇんだから守るしかねぇだろ!!

あの二人を相手にどうやって……?

やることってなんだ?
何を考えてる?


悶々と考えていた俺はそのまま眠りに落ちてしまっていた。

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『蝉』~高い壁~8
- 2018/10/01(Mon) -

つくしちゃんとの時間は荒んだ俺の心を温かくしてくれる。
今日もそんな1日だった。

道具を片づけた後、街に出掛け食事をし、つくしちゃんを家まで送って車へと戻ってきた所だった。

本音を言っちまえば帰りたくはねぇ。
けどこういったことに疎そうなつくしちゃん相手に急いでも仕方ねぇし…。
とはいえ…これはいつまで続くんだろうな…。

シートに凭れてそんなことを考える。
ふとスマホを確認してみればそこには家元夫人からの着信が残っていた。

ふぅ…。

1日をぽかぽかとした明るい気分で締めくくりたかったのに、どうやらそうもいかねぇらしい。

さて…どう出るんだ?

折り返しをかけることなくエンジンをかけて屋敷へと急いだ。



リビングに足を運べばお袋はおろか親父までもがソファーに腰を下ろしている。

「あら、お帰りなさい。
よかったわ、帰ってらして。」

「ああ、ただいま。
二人揃って何か用?」

避けて通ることが出来るなんて思っちゃいねぇ。何をどうしたって認めてもらうしかねぇんだから。
仕方なく向かいのソファーに腰を下ろした。

「女性を連れてきたらしいな?
一体どういうつもりだ?」

開口一番がそれか…。

お袋はにこりともせずにお茶なんか煎れてやがる。

やっぱ食えねぇな…この人は…。

親父は親父で睨むように俺を見てる。

「もちろんそういうつもりだけど?」

おいおい…盛大にため息つくんじゃねぇよ!
つーか…俺も俺だよな。
あれだけ穏便に済ませようと帰り道に考えてたっていうのに。

「聞けば一般家庭のお嬢さんっていうじゃないか。
もっと釣り合う女性がいるだろう?
尤も今までのような学生時代のお遊びなら構わんがな。」

「遊びの女なんてわざわざ連れて来るかよ。

それに…釣り合う女性って何だ?
一体どういうのを指す訳?」

売り言葉に買い言葉のようなやり取りに内心冷や冷やしていた。
これでつくしちゃんの印象を悪くしちゃ元も子もねぇ。

「俺は家のバランスとかそんなのはたいした問題じゃないと思ってる。

俺にしたってそうだろ?
こんな家に生まれたからってまともに育った訳じゃないし?
彼女に知られたくないこともたくさんしてきたしな。

それは親父の言う『釣り合う女性』っていうのもそんなんじゃないか?」

「驚いたな…。」

小さな声で呟きながら親父はまじまじと俺を見ている。

「まさかお前がそんなことを言うとは…。
少しはまともになったようだ。
もっとまともになればもっと別のことも見えてくるかもしれん。

当面は目を瞑ろう。
好きにすればいい。
が、忘れるな。
決して許した訳ではないし、認めた訳でもない。
頼まずとも釣書はいくらでも来るしな。」

無表情のままそう言うと立ち上がり一人リビングを出て行こうとしてる。

「彼女に茶を教えることになったから。
一応報告しとくよ。」

言い逃げなんかさせるかよ!
しかも何だよそれ。
くっそ…。
学生期間の猶予ってか?
その猶予…有効に使わせてもらおうじゃねぇか!!

親父は何を言うでもなく部屋を出て行った。


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『蝉』~高い壁~7
- 2018/09/29(Sat) -

まるで私たち以外、誰も存在しないかのように静かなお茶室に二人きり。

正面に座る総ちゃんは凛としていて、普段見ている総ちゃんとは全くの別人のようでなんだか落ち着かない。

それでもいざ総ちゃんが準備を始めるとその動き一つ一つがすごく綺麗で、私はただ見惚れてしまう。

常日頃から何をしていてもスマートに見えていたけど、きっとその原点がこのお茶なんだろう。

そう思わせるほどに今の総ちゃんは綺麗だ。

うわぁ…。
こんなに綺麗な人が私の『彼』なんだ…。

っていけないいけない!
せっかく総ちゃんが私のためにお茶を点ててくれてるんだから!!


シュン…シュン…シュン………


すでに部屋にはお湯の沸く音が響いていた。

あぁなんかいいな…こういうの…。

はじめてこそどきどきと緊張でどうにかなりそうだったけど、音を聞いているうちに落ち着いていた。
そして改めて総ちゃんってすごい人なんだな、と思う。

お茶のことなんて正直まるで分からない。お作法なんてものもさっぱり…。

けれど総ちゃんが凄いってことだけは分かる……ような気がする。

だってずっと見ていたくなっちゃうもん。
もちろん格好いいとかそういうのは抜きにして……何て言うんだろ…。
動きにムダがないって言うのかな?
とにかく綺麗なのよ。

総ちゃんを見ながらあれやこれやと考えを巡らせていた私の前に茶碗が差し出されて、しっかりとそれを見ていた……はずなんだけど…。
総ちゃんに魅せられて私の意識はきっとぼんやりしていたんだと思う。

「つくしちゃん?」

「ご、ごめんなさい!」

焦った私の口は勝手に動き出していた。

「もしかして退屈だった?」

「ううん、違うの!
そうじゃなくて!!
あのね…」
「よかった。
つくしちゃん、冷めないうちにどうぞ召し上がれ。
作法とか気にしなくていいから。」

「ありがとう…。
いただきます!」

正面に口つけちゃいけないんだっけ?
でも…正面って…どこ?
前に何かで三回回してから飲むってあったような…?

どうしようか考えた末に、少しだけ茶碗をくるりと回して頂くことにした。

「美味しっ……って…えーと……あの…ごめんなさい。
お作法全然分かってなくて…。」

「くくっ。
そんなの気にしなくていいから。
オレがつくしちゃんにご馳走したかっただけだしね。
さっきの零れ出た言葉だけで十分嬉しいよ。」

しゅんとしていた気持ちがその言葉で霧が晴れたように明るくなった。
総ちゃんってお日様みたいだ。

「今度頂くときまでにはちゃんと勉強しておくね!」

立ち直った私は自分でも凄いと思うほど前向きになれる時がある。
きっと今日はそんな日だったんだろう。

気持ちばかりが先走っていた私に総ちゃんは思わぬ言葉を落とした。


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『蝉』~高い壁~6
- 2018/09/27(Thu) -

部屋まであと少しの所で歩みを緩めた。
聞こえて来るのは二人分の笑い声。
その一つは紛れもなくつくしちゃんで、もう片方は……。

何がどうなったらこうなるんだ?

頭に浮かぶのは無数のクエスチョンマーク。
けれども相手があのつくしちゃんならあり得るのかもしれない。

それまでが嘘のようにゆっくりと部屋の前まで進み、中に声をかけ引き戸を開ければ、弾けんばかりのつくしちゃんの笑顔が飛び込んできた。

それを見てようやく人心地ついた俺は部屋に入りつくしちゃんの隣にどっかりと腰を落ち着けた。

「勝手をしてごめんなさいね、総二郎さん。
鈴原に聞いてどうしてもお会いしてみたくなってしまって。

でもとっても可愛らしい素敵なお嬢さんだわ~!」

これは本心なのか?
それともフェイクか?

表面上は笑顔を絶やすことのないこの人の言葉を秤にかけていた。

「勝手にごめんなさい…。
でもちゃんとご挨拶が出来て、こうしてお話も出来てすごく嬉しかったし楽しかったの。」

座ったまま一言も発しなかったせいか、つくしちゃんは俺の顔色を窺うようにそう言う。

つくしちゃんに対して怒るなんてあるワケねぇのにな。

「くくっ。
怒ってないから。
楽しかったんならよかったよ。」

ほっとしたように息をつくつくしちゃんを確認してお袋に視線を向けた。

澄ました顔をして何を考えているのか分かったもんじゃねぇ。

「もういいだろ?
これからつくしちゃんに茶をご馳走するんだ。」

「あら…残念だわ。
ごゆっくりしてらしてね。

牧野さん、また来たときには話し相手になってくださると嬉しいわ。
今日はありがとう。」

「はい…こちらこそありがとうございました。」

言葉を交わす二人を交互に見る。

ったく…何考えてやがるんだ?
つくしちゃんは俺と違って素直なんだから信じちまうだろうが!!

「じゃあ行こうか。」

やることなすこと全てが信用ならずに、でもつくしちゃんの手前それを出すことも出来ねぇ。
仕方なくつくしちゃんに声をかけその場を後にすることにした。

「うん。

ありがとうございました!」

ご丁寧にそんな言葉まで残すつくしちゃんに改めていい子だなぁと思う。




「総ちゃん…。」

廊下に出て手を引いて歩いていると、手をくいくいと引きながらそう呼びかけてきた。

「ん?」

「お着物…なんだね。」

「くくっ。
最高のお茶をご馳走したいからね。」

「すっごく似合ってる!」

頬を染めながら照れくさそうに、でもしっかりと俺の目を見て言ってくれる。
こんな言葉が何よりも嬉しく感じてしまうのはきっとつくしちゃんの影響なのかもしれない。

「ありがとな。」

嬉しそうに綻ぶその顔を横目に茶室へと歩を早めた。


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『蝉』~高い壁~5
- 2018/09/25(Tue) -

「は、はじめまして!
牧野つくしと申します。
この度はご挨拶もせずにお邪魔致しまして申し訳ございませんでした!!」

あっ、声…大きすぎたかな?
どうしよう?
でももうやり直せないし…。

頭を下げている私にはお母さんがどんな顔をしているのかは分からない。

「どうぞ顔をおあげになってくださいな。」

その優しい声に安心して顔を上げると総ちゃんのお母さんはふんわりと笑っていた。その顔がやっぱり総ちゃんに似ていて直視する事が出来ずに視線を彷徨わせてしまった。

「ごめんなさいね、急にお呼びたてしてしまって。
総二郎さんが女の子を連れてくるなんて初めてでしたから、ついつい気になってしまいましてね。」

照れくさそうにそう言ったお母さんは総ちゃんから聞いていた印象とは全然違う人だった。

「いえ…そんな…。
びっくりはしましたけど、きちんとご挨拶が出来て嬉しいです。」

「本当にそうね。
私もきちんとお話が出来て嬉しいわ。
総二郎さんったら学校のこととか周りで起きたこととか、何にも話してくださらないから…。」

「えっ、そうなんですか?」

寂しげに言う姿を見ていたら自然とそう言っていた。

だって…お母さんが可哀想になっちゃったんだもん。

総ちゃんから聞いていたお母さんの印象はとにかく冷たい人だった。
でも今目の前にいるお母さんはとても優しそうだ。

なんでこんなに印象が違うんだろう?

考えてもどうしようもないことなのに考えずにはいられない。

部屋に入ったままぼんやりと立ち尽くしている私にお母さんは座るように促してくれる。

私たちは使用人さんが持ってきてくれたお茶とお菓子を頂きながら、学校のことや総ちゃんの話をしていた。



部屋の真ん中で呆然とただ立ち尽くしていた。

一体つくしちゃんはどこに消えたんだ?
洗面所にしても、勝手の分かんねぇ家を一人ふらふら歩き回るようなコじゃねぇし……?
外に出たワケでもねぇよな?
靴だってねぇんだから。

そう思いながらも念のため、窓際に近づいて外を覗いてみた。

そりゃそうだよ。
いるワケねぇっつーの!
じゃあ一体どこに?

考えれば考える程嫌な予感しかしねぇ。
でもってこういう時の俺の勘は大抵当たっちまう。

「失礼致します。
若宗匠、いらっしゃいますでしょうか?」

その声を聞いた途端、自分の勘が当たっていることを確信した。
返事をする時間すら惜しくて入口に戻り襖を開くと、そこには驚いたのか目を見開いた鈴原が座っていた。

「つくしちゃんは?」

鈴原の言葉も待たずにそう口にしていた。

あぁ…いつもだったらもっと上手く対応出来んのにな…。

ほんの一瞬そんな思いが頭を過ったが、今はつくしちゃんが最大の優先事項だ。

「牧野様は奥様に呼ばれてリビングにいらっしゃいます。
若宗匠に伝えるようにとのことでした。
来るのが遅くなり申し訳ございませんでした。」

ふぅっ。
やっぱりそういうことか…。
まぁ、みつかっちまったんだからそうなるよな…。

「分かりました。
直ぐに向かいます。」

そんなつもりは露ほどにもなかったが、言い捨てるようにその場を離れていた。

おかしなことになってねぇよな?
余計なこと言うんじゃねぇぞ!

西門の屋敷内は走るなんて御法度。
それはちっせぇ頃からの教えで、こんな状況でもその教えに従い走ることはしなかった。
まぁそれに近いものはあったかもしんねぇけどな。


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『蝉』~高い壁~4
- 2018/09/23(Sun) -

一人客間に残された私は立派な座椅子に座る気にもなれなくて、窓際にちょこんと腰を下ろした。

はぁ…。

考えまいとしてもそれは無理で自然とため息が零れる。

どう考えたって不釣り合いだよね…。
でも…今更諦めるなんて出来そうにないし…。

自分でも驚く程の早さで総ちゃんに惹かれていく自覚はあった。
そこに一抹の不安がなかった訳じゃない。けど、いつも総ちゃんが『大丈夫』って言ってくれていたから安心してた。

うーん…。
大丈夫……なのかな……?

「牧野様、失礼致します。
少しよろしいでしょうか?」

「はっ…はい!!」

考え込んでいた私の耳にそんな声が届いて、反射的に返事をしていた。

「失礼致します。」

声と同時にすぅっと襖が開いて、さっき会ったばかりの使用人さんが顔を出した。

「あっ、あの…先程は失礼致しました。」

緊張でどうすればいいのか分からないのにそんなことを口走っていた。

でも…別に変じゃないよね?

頭を下げながらこの後どうすればいいのか考えたけど、やっぱり分からなくて仕方なく頭を上げると使用人さんは柔らかく微笑んでいた。

「私のような者にお気遣いは無用でございます。
ですがありがとうございます。

改めまして、牧野様。
少しお時間をよろしいでしょうか?
家元夫人がお呼びでございます。」

「えっ…あ…はい……。

あっ、でも、総ちゃ…総二郎さんがここで待つようにと言っていたのですが……。」

急な事で頭は真っ白になった。
その場を逃れるためって訳じゃないけど、言われたことをそのまま伝えてみた。

だってだって聞いてないってば、そんなの!
これで諦めてくれるかな?
家元夫人って…総ちゃんのお母さんだよね?
なんで私が呼ばれてるの?

「若宗匠には私からお伝えいたします。
牧野様はどうぞ家元夫人にご挨拶をなさってくださいませ。」

若宗匠?
あっ…総ちゃんのこと?
挨拶…。
確かにそうか。
お家に来たのに挨拶もしないなんて、常識を疑われちゃうもんね。
そんなの嫌だ!

「分かりました。」

小さく深呼吸をして立ち上がると、使用人さんはほっとしたように息をついた。

これってどういう意味なんだろ?
もしかして家元夫人ってすっごく怖い人だったりするのかな……?
大丈夫なんだよね…私…?

部屋を出ると前をゆっくり歩く使用人さんの後に続いた。
けど歩けども歩けども目的の部屋に辿り着きそうにない。

このお家ってどんだけ広いのよ?
これじゃあ掃除だって大変なんだろうなぁ。全部のお部屋を掃除するのに一体どれくらいかかるんだろ?
使用人さん…何人いるのか知らないけど大変なんだろうなぁ。

「さま…牧野様。」

「はっ、はい!」

「こちらでございます。」

ど、どうしよう。
とうとうご対面?
西門さんのお母さんかぁ。
どんな人なんだろう…。

「失礼致します。
牧野様をお連れ致しました。」

考える間もなく使用人さんはそう声をかけている。

「ありがとう。
どうぞお入りください。」

主の声を合図に使用人さんが引き戸を開けてくれた。
ドキドキしながらも使用人さんに頭を下げて中に入ると、彼女は静かに襖を閉めて去っていった。

中には見るからに高価そうな、でもしっとりと落ち着いた感じの着物を来た綺麗な人がゆっくりとその場に立ち上がった。

あぁ…。
西門さんはお母さん似なんだ……。

ぼんやりとそう思いながらその美しい人を見ること数秒。

いやいやいや!
ご挨拶でしょ!!


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