総二郎と牧野の結婚式に出席する為に、スケジュールを調整させて帰国した。式はメープルで挙げる手筈になってる。
用意したスイートに行くと、そこにはすでに先客が来ていた。いかにもこいつらしい。
「久々だな、あきら。」
「よぉ、司。元気そうだな。」
そこで、初めて今日の計画を聞かされた。
「そんな嫌そうな顔するなよ?」
予想通りの反応だったのか、苦笑するあきらに余計にイラッとする。
「嫌そうなじゃねー。嫌なんだよっ。なんで俺様がそんな事しなきゃなんねーんだよっ。」
「そう言うなよ。せっかくの二人の門出だぜ?牧野だったら絶対に喜ぶぞ?」
「断るっ。」
あきらが意味深にニヤリと笑った。
「司、あの二人には大きな借りがあるんじゃなかったか?俺にも、類にもな。牧野も喜ぶし、悪い話じゃないだろ?」
てめぇ、今それを持ち出すのかよ?
けどそれを言われたらなんも言えねーのは事実で…。
「くそっ。分かったよ。やればいいんだろ、やれば。
類は知ってんのか?」
「いや、まだだ。っていうか、まだ誰にも話してないから、今からだな。」
「間に合うのか?」
「なんとかなるだろ?」
結局、この準備に俺も付き合わされるはめになった。準備をある程度終わらせて部屋に戻れば、いつの間にか全員が揃ってる。
「つかさー。久しぶりっ。元気だった?」
いきなり滋が抱きついて来た。
「おいっ、滋。抱きつくんじゃねー。離れろっ。」
「もー、司ってば照れちゃって!相変わらずなんだからっ。」
漸く滋が離れてホッとしたのも束の間、総二郎と牧野が入って来た。
牧野はなんも聞かされてねー。何かある度におどおどしたり、固まったり、あいつは幾ら歳を重ねても、全然変わんねー。
そんなあいつを見てっと、隣に相応しいのは俺なんじゃねーかってどうしたって思っちまう。
総二郎が牧野を想って計画した結婚式は簡単なもんだった。集まったのはごく限られた人間だけで、それこそいつもの集まりと変わんねー。
いろんな想いを抱きつつ二人を見ていた。
総二郎の隣で幸せそうに笑う牧野。
牧野を常に視界の片隅に入れて見守る総二郎。
あんな二人を見るのは初めてだった。
俺の中の牧野は、頑固で意地っ張りで、どこまでも素直じゃねー、そんな女だった。
総二郎にしてもそうだ。女に見境がなくて、いつでもちゃらんぽらんでいい加減なヤツだった。
なのに、目の前にいる二人はなんだ?
牧野は安心しきって総二郎に身を任せ、総二郎の目には牧野しか映っちゃいねー。あいつら、あんなヤツだったか?
そんな二人を見てらんなくて、牧野が支度をするために部屋を出たのを期に酒を煽っていたら、類が俺の知らない二人の話をし始めた。
類の話を聞いて適当に口を挟みながらも、違う事を考えていた。
類はこんな事するようなヤツじゃねー。いつでもどこでも、誰に対しても無関心なヤツだった。俺らにだって心を開こうとはしなかった。事実、こいつの考えてる事なんて、さっぱり読めねー。
そんな類が誰に言われるでもなく、二人の話を一頻りして今はソファーに寝ている。
こんなとこは昔と全然変わんねーのにな。
俺だけがあの頃に取り残されて、身動き一つとれずにいたのか…。そんな俺を置いてけぼりにして、大人になったあいつら。子供のまま成長を止めた俺。
なのに、あの二人は俺をそんな世界から引きずりあげて、俺の止まっていた時計を強引に動かし出した。
俺も前に進まねーとな。いつまでも立ち止まってなんか居られねーんだ。今度こそ、ガキの時間は終わりだ。
俺にとって牧野が特別な女である事はこれから先も変わんねー。
なら、この女の為に出来る事は全てやってやるさ。
これから総二郎も知らないあきらの計画が始まる。
正直くだらねーとも思うが、牧野はきっと喜ぶだろう。その笑顔を想像して自然と俺の頬も緩んでいた。
と言うことで、オマケバージョンでした。
って、これ、普通に本編に混ぜちゃってもよかったような…?なんて思ったのは数日前の事…。
司誕なかなか思い浮かばずに、前後に合うように書いたものだったのよね(苦笑)
結局ずれずれで使えなかったけど(笑)
明日からはまたお話の続きに戻ります!
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