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永遠に愛しい女
- 2016/01/31(Sun) -

真夜中に携帯が鳴り響いた。

久しぶりに屋敷に帰ってきたってのにまた問題か?たまにはゆっくり俺を休ませてやろうなんてヤツはいねーのか?

苛立ち半分ため息半分で携帯を手に取った。

が…。
うんともすんともいいやしねー。

けれど鳴り響く携帯に、ようやくプライベートのそれが鳴っていることに気付いた。

あれがなるって事は…。まさか、あいつらになんかあったのか…?それまでの眠気は吹き飛んで、慌ててデスクの上にある普段は鳴る事のねー携帯を掴んだ。

別れて以来、初めて目にするその表示に胸が騒いだ。
牧野…?

二人揃って会社に乗り込んで来てから数ヶ月。
それによって何かが変わった。まるで昔にタイムスリップしたかのような時間だった。

けど、世の中そんなに甘くねぇ。変わったと思ったのは勘違いで、実際のところは何一つ変わっちゃいねー。
現に、あの時会って以来連絡すらとっちゃいねーんだ。

その牧野からの電話に躊躇してる間に呼び出し音は途切れていた。
携帯を握りしめたまま、身動き一つとれやしねー。

あいつからの電話…。

あいつは大丈夫。分かってくれる。そう思ってあいつに甘えちまった結果が今そのものだ。俺はまた同じ事を繰り返すのか?

なんとか思考を呼び覚まし、折り返しかけてみた。コール音が不安を掻き立てる。
一体何があった?

あぁ。あの時のあいつらもこんな気分だったのか…。今更気付いたってもうおせー。過ぎちまったもんは取り返しようがねーんだから。

「もしもし?道明寺?」

「おぅ、どうしたんだ、こんな時間に?」

「うん、ごめんね。番号変わってないんだね?」

「あぁ、変える理由もねーからな。」

牧野の声が緊張してるように感じるのは気のせーか?

「あのね、道明寺…。」

歯切れの悪い牧野の様子から、考えは悪い方にしか進まねー。

「誕生日おめでとう!」

はぁー?
誕生日っ?

「えっ?私、間違えて…ない…よね?あれっ?」

途端にしどろもどろになる牧野が可笑しくて笑いを堪えた。

「お前それだけの事でわざわざ電話してきたのか?」

俺自身忘れていたのに覚えていてくれた牧野。なのに素直じゃねー俺はそんな言葉しか出てこねー。

「あっ、ごめんね、疲れてるよね。でも、思い出したらどうしても伝えたくなっちゃって…。ほんとごめん、もう切るからっ!」

「おいっ、待てって!誰も、迷惑だなんて言ってねーだろ。」

電話の向こうは静まり返っていて、物音一つ聞こえねー。

「牧野。ありがとな。」

「うん…。」

「総二郎と上手くやってんのか?」

「…うん。」

「そうか…。幸せになれよ。」

「…ありがとう、道明寺。」

「「…。」」

長い沈黙が流れた。俺も、おそらく牧野も、何を話せばいいのか分かんねーんだ。

「悪い、俺まだやる事あんだわ。またな。」

「うん、分かった。またね?またみんなで会おうね?」

「時間が合えば…な。じゃ、ありがとな、牧野。」

「うん、おやすみ。」

自分から切ることが出来ずに牧野が電話を切るのを待っていた。暫くするとプーップーップーッと無機質な音が響きだす。

自分の誕生日なんか興味もねーし、忘れてた。っつーか、祝ってほしいヤツもいねー。

けど、牧野の言葉が頭の中を反芻していた。

俺は何にもしてやれなかったのに、あいつは覚えてて、それだけのために連絡してきたのか…。


嘗て俺の腕をするりと抜け出して行ったあいつが、また戻って来た。昔とは違う、幼馴染みの婚約者として…。
その現状が胸に突き刺さる。けど同時に、あいつの笑顔が見れんなら、悪くねーとも思っちまう。

俺が唯一頭が上がんねー女。
やっぱり、あいつは最強だ。



司くん、お誕生日おめでとー!

いやいや、心の時計ではヒールにしちゃってごめんなさいね(汗)
えっと、あの、次の連載では普通に?登場出来るから許してね。
ほらほら、つくしちゃんもおめでとうって言ってくれたじゃない。
きっと、他のお部屋ではあまあまでラブラブな時を過ごせてるはずだから、我が家ではこんなんで勘弁してくださいな?

ということで、司誕SSをお届け致しました!
お楽しみいただけましたでしょうか?
何気に司誕難しかったです(涙)



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永遠に愛しい女 オマケver.
- 2016/03/10(Thu) -

総二郎と牧野の結婚式に出席する為に、スケジュールを調整させて帰国した。式はメープルで挙げる手筈になってる。
用意したスイートに行くと、そこにはすでに先客が来ていた。いかにもこいつらしい。

「久々だな、あきら。」

「よぉ、司。元気そうだな。」

そこで、初めて今日の計画を聞かされた。

「そんな嫌そうな顔するなよ?」

予想通りの反応だったのか、苦笑するあきらに余計にイラッとする。

「嫌そうなじゃねー。嫌なんだよっ。なんで俺様がそんな事しなきゃなんねーんだよっ。」

「そう言うなよ。せっかくの二人の門出だぜ?牧野だったら絶対に喜ぶぞ?」

「断るっ。」

あきらが意味深にニヤリと笑った。

「司、あの二人には大きな借りがあるんじゃなかったか?俺にも、類にもな。牧野も喜ぶし、悪い話じゃないだろ?」

てめぇ、今それを持ち出すのかよ?
けどそれを言われたらなんも言えねーのは事実で…。

「くそっ。分かったよ。やればいいんだろ、やれば。
類は知ってんのか?」

「いや、まだだ。っていうか、まだ誰にも話してないから、今からだな。」

「間に合うのか?」

「なんとかなるだろ?」

結局、この準備に俺も付き合わされるはめになった。準備をある程度終わらせて部屋に戻れば、いつの間にか全員が揃ってる。

「つかさー。久しぶりっ。元気だった?」

いきなり滋が抱きついて来た。

「おいっ、滋。抱きつくんじゃねー。離れろっ。」

「もー、司ってば照れちゃって!相変わらずなんだからっ。」

漸く滋が離れてホッとしたのも束の間、総二郎と牧野が入って来た。

牧野はなんも聞かされてねー。何かある度におどおどしたり、固まったり、あいつは幾ら歳を重ねても、全然変わんねー。
そんなあいつを見てっと、隣に相応しいのは俺なんじゃねーかってどうしたって思っちまう。

総二郎が牧野を想って計画した結婚式は簡単なもんだった。集まったのはごく限られた人間だけで、それこそいつもの集まりと変わんねー。

いろんな想いを抱きつつ二人を見ていた。

総二郎の隣で幸せそうに笑う牧野。
牧野を常に視界の片隅に入れて見守る総二郎。

あんな二人を見るのは初めてだった。

俺の中の牧野は、頑固で意地っ張りで、どこまでも素直じゃねー、そんな女だった。
総二郎にしてもそうだ。女に見境がなくて、いつでもちゃらんぽらんでいい加減なヤツだった。

なのに、目の前にいる二人はなんだ?

牧野は安心しきって総二郎に身を任せ、総二郎の目には牧野しか映っちゃいねー。あいつら、あんなヤツだったか?

そんな二人を見てらんなくて、牧野が支度をするために部屋を出たのを期に酒を煽っていたら、類が俺の知らない二人の話をし始めた。

類の話を聞いて適当に口を挟みながらも、違う事を考えていた。

類はこんな事するようなヤツじゃねー。いつでもどこでも、誰に対しても無関心なヤツだった。俺らにだって心を開こうとはしなかった。事実、こいつの考えてる事なんて、さっぱり読めねー。

そんな類が誰に言われるでもなく、二人の話を一頻りして今はソファーに寝ている。
こんなとこは昔と全然変わんねーのにな。

俺だけがあの頃に取り残されて、身動き一つとれずにいたのか…。そんな俺を置いてけぼりにして、大人になったあいつら。子供のまま成長を止めた俺。

なのに、あの二人は俺をそんな世界から引きずりあげて、俺の止まっていた時計を強引に動かし出した。

俺も前に進まねーとな。いつまでも立ち止まってなんか居られねーんだ。今度こそ、ガキの時間は終わりだ。

俺にとって牧野が特別な女である事はこれから先も変わんねー。
なら、この女の為に出来る事は全てやってやるさ。

これから総二郎も知らないあきらの計画が始まる。
正直くだらねーとも思うが、牧野はきっと喜ぶだろう。その笑顔を想像して自然と俺の頬も緩んでいた。



と言うことで、オマケバージョンでした。

って、これ、普通に本編に混ぜちゃってもよかったような…?なんて思ったのは数日前の事…。
司誕なかなか思い浮かばずに、前後に合うように書いたものだったのよね(苦笑)

結局ずれずれで使えなかったけど(笑)

明日からはまたお話の続きに戻ります!



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