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理想の彼氏 その裏の苦悩 1
- 2017/07/13(Thu) -

side Tsukushi 前編



初めて自分の気持ちに気付いた時、愕然とした。

どうしてよりによって…?

どうしようもない気分のまま深くため息をつくと同時に、心の奥底に想いを閉じ込めた。

はずだった。


何がどうなってたんだろう?

未だに理解出来ずにいる。

だってだって!!
あの西門さんが私に言ったんだよ?

『牧野、俺と付き合ってくれ。』

って。
だから私…思わず言っちゃったもん。

『どこに?』

なんてお約束のような言葉。
当然呆れられると思ってたら、西門さんってばちゃんと言ってくれたのよ。

『お前が好きだ。』

って。それはそれは真剣なまなざしで!
それで私は考える間もなく頷いちゃったんだよね。




大きな窓からは柔らかな陽射しが射し込んでる。外の寒さなんて忘れちゃうくらい暖かいラウンジのソファーに腰を落ち着けて、ドキドキしながらあの人が来るのを待っていた。

付き合いだしてまだ一ヶ月。

未だに慣れない。
だってあの人が私の恋人?信じられる?

それでも傍にいれることが嬉しくて、頬が緩むのを止められない。

今日はバイトだって言ったら、送りがてらにお散歩デートでもするか?なんて流し目で言われたら断れる訳ないよね。
まさか西門さんの口から『お散歩デート』なんて言葉が出てくるとは思わなかったから思わず笑っちゃったけど。

でも場所なんてどこでもいいんだよね、私。だって一緒にいられるだけで幸せなんだから。
もちろんこんなこと、本人を目の当たりにしたら言えないんだけどさ。

「おーい、牧野ー?」

「ふぇっ?」

振り返るとそこには半笑いの美作さんがいる。

「何ニヤニヤしてるんだ?総二郎とデートか?」

「ニヤニヤなんてしてないからっ。」

「いや、してたけど?そんなに嬉しいんだ、牧野は?」

「もー、うっさい!放っておいてよっ。」

どうせからかうつもりなんでしょっ?

「放っておける訳ないだろ。お前は大事な妹分なんだから。困ったことがあったらいつでも俺に言うんだぞ?」

私の頭に手を伸ばす美作さんに素直に頷いた。

「わりぃ、遅れた。」

「よぉ、総二郎。お姫さまが首長くして待ってたぞ。」

首を長くしてって恥ずかしいんだけど…。まともに見れないじゃない。
美作さんを見上げるとなぜか笑ってる。だけどこの笑いって、いつも何か企んでる時のだよね…?

気になって西門さんを見てみたけど、至って普通だし。
なんだろう…?

「牧野、ごめんな。行こうぜ。」

その声に私は思考を止めた。
せっかく一緒にいられるんだから、今は西門さんのことだけを考えていたい。

私の手を取って歩き出す西門さんの広い背中を見つめ私も歩き出した。



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