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花沢城物語 出逢い編~小さな恋のはじまりは~ by GPS
- 2019/12/10(Tue) -





それは、類達の両親が国王と王妃をしていた頃の話。
彼等は、次期国王としての知識、広い見聞を身に付ける為、そして人として成長する為に、
揃って世界有数の学都がある他の島に留学する事になった。


********


「……くそっ、面白くねぇなぁ!なんで俺達がこんな国に留学しなきゃなんねぇんだ?」
「司、お前が1番勉強しなきゃいけないんじゃないのか?」
「あきら、言えてる!だよな~、司はまず字を覚えねぇとなぁ!」
「何だとっ!!」

「………………(眠い)」


今、俺達が居るのはFlowerislandから少しだけ離れた島。
そこにある帝王学を学ぶ学校に入ることは昔から決まってて、今日俺達は揃ってその学校に入学した。

一応王子という立場から専用の寄宿舎があって、そこに4人で暫く同居……はぁ、考えただけでも五月蠅そう。


「いつまで居るんだ?3日間か?」

司……そんな訳ないでしょ。遠足じゃないんだから。

「いい女居るかなぁ~?ワクワクするよな!」

総二郎……ここは男子校だって。何回言ったら判るの?

「最新設備整ってるんだろうな?俺、ドライヤーには拘りがあるんだけど」

あきら……お前の髪のことまで気を遣わないって。そんなの自分で持って来なよ。

「「類!寝ながら歩くなよ?」」」

あっ……目、閉じてた?


取り敢えず授業は明日から。
そういう訳で俺達はのんびり歩いて宿舎の方に向かっていた。

その時……


「珀~!何処に行ったの?珀~?」

何処かから女の子の声が聞こえた。
ハク?誰かを探してるんだろうか?

当然その声を聞いた司もあきらも総二郎も声のした方を振り向いた。

俺達の後ろで茂みを掻き分けて出てきたのは黒髪の女の子……大きな目をした小っこい子。
スカートに沢山の葉っぱをつけたまま俺達の前に出てきて、キョトンとした顔してる。

「あれ?もしかして今日この島に来る予定の方ですか?」

「は?あぁ、そうだけど」
「なんだ?お前、偉そうに!」
「司、怒鳴るなよ!相手は女の子だぞ?」

「ごめんなさいっ!えへへ、見慣れない人達だったから。
ようこそ、Horsetailislandへ!」




「……あんた、何か捜してたんじゃないの?」

「あっ!!そうだった!この辺で茶色い豆柴見ませんでした?
コロコロしてて人懐っこくて食いしん坊なの」


「……あんたの飼い犬?」

「飼い犬って言うか、友達?1番仲良しなの。
何処行ったのかなぁ……珀~!!」


わんわん♪

「あっ!居たぁ!もうっ……心配したんだからね!」


この子が出てきたのとは反対側の茂みから出てきたのは本当に小っちゃい犬だった。
尻尾をフリフリ嬉しそうな顔して出てきて、この女の子の胸に飛び込んだ。


ドクン……あれ?なんで心臓が鳴ったんだろ?


「やだぁ!舐めちゃダメだって!」なんて言いながら真っ赤な顔して笑ってる……。

……凄く…可愛いかも。


「あはは!可愛いヤツだな。でも見付かって良かったじゃん。
俺は西門国の王子、総二郎。宜しくな!」

「何処で遊んでたんだろう?少し汚れてるから洗ってやりな?
俺は美作国の王子であきら。宜しくね、お嬢さん」


わんわん♪


「…………」
「あれ?司は挨拶無しかよ?」

「そ、その前にそいつをどっかに連れて行け!!
俺は犬が大っ嫌いなんだよっ!!」


…………ゎん?💢


「睨むな!!チビのクセにっ!!」
「あぁ、こいつは道明寺国の王子で司。
いつもこんな感じだけど許してやって?」


「うふふ、はい!皆さん、宜しくお願いします!
えと……あなたは?」


「俺……花沢国の類。
あのさ……その犬抱っこしてもいい?」


「……あっ、はい!どうぞ♥」

その子の腕に抱かれてた犬を受け取って抱っこしてみた。


あ……舐めた。くすっ……可愛いかも。
その犬の目をジッと見つめると……ペロンと鼻の頭をまた舐めた!

「くすっ、お前……いい目をしてるね」

わんわん♪

「あら!類さんの事が好きなのかしら?
初めてなのに大人しくしてますね!」


「……あんたの名前は?」

「あっ!ごめんなさい。私の名前は牧野つくし。
父がそこの学校の教授なんです。だからこの近くに住んでるの」


「え?この学校の?」
「そうなんだ!へぇ!」

「はい!『The great prince of the spirit University』……略してGPS学校です」

「「「「……何だろう。略されたら悪寒が……」」」」

「イヤだわ、悪寒だなんて。そんな言い方しなくてもいいじゃないですか~。
それよりここでの生活を楽しんでくださいね~♪」


やっぱり可愛いかも……。
でもこの笑顔どっかで見た気もするんだよな…気のせい……?

ふと湧いた疑問がどうしても気になって仕方ない。
目の前にある人懐っこい笑顔を見ながら自分の記憶を遡っていたら、腕の中で犬がもぞもぞ動き出した。

「どうしたの?やっぱりご主人がいい?」

まん丸の目は俺をじっと見てて、腕から逃げ出したい訳じゃないっぽい。もしかして他に気を取られてるのを感じてちょっと妬いちゃったのかな?

「ほんとお前 可愛いね♪」

「うふふ。琥珀ったら類さんのこと好きなのね♪」

女の子はそう言って琥珀と目線を合わせるように屈み込んだ。

「珀、気持ちは分かるけど邪魔しちゃダメよ?この人達はお勉強をしに来たんだから。
今日はもう帰りましょう?きっとまた会えるし、遊んでもらえるわ♪」


俺から琥珀を受け取ろうと腕を広げるから素直にそれに従って琥珀を預けた。

「遊んでくれてありがとう!それじゃあ、またね♪」

女の子はそれだけ言うとにっこり笑って手を振りながら来た道へと消えてった。


牧野…つくし……か……
可愛かったな……


「おいおい、俺達はスルーかよ?」
「仕方ないんじゃないか?今日は犬に気を取られてたんだろ…きっと…」

「はっ、いなくなって清々したじゃねーか!」

「それにしても類が女の子と普通に話すなんて珍しいよな」
「あぁ、そういえばそうだな。
けど類、抜け駆けはなしだぜ!」


「……………」


総二郎もあきらもうざいっ!
俺が女の子と……つくしとどうしようと俺の勝手でしょ!

無言のまま宿舎に向かって歩きだしたらそれをどう捉えたんだか分かんないけど、くすくす笑いながらついて来た。

暫くはこんな日が続くのかと思えば気分は下がる一方。


けど……
またゆっくり会いたいな………


始まったばかりの生活に少しだけうきうきしてた。


***


あれから数週間。
学生生活にも慣れ、寄宿舎生活にも……、
ほんの少し慣れては…来た。
独りっ子の俺はプライベートも奴等が一緒の生活に息切れしそうになると、彼女に初めて会った茂みの近くにあるベンチで息抜きするのが、定番になりつつある。
そんな時は、不思議と珀を追って彼女が顔を出してくれる。
ここの生活で、唯一 肩の力が抜ける心地好い時間でもある。

……にしても、スッキリしないのは、その彼女の事だ。
……俺…何処かで 会ってる…ハズ…いや、必ず。

…………何故だろう…思い出せない…



「であるからして、この場合は………」
「ここは帝王学に於いて、非常に大切な…………………」


……退屈過ぎる帝王学の講義を右から左へ聞き流してるウチに、寝たらしい…


『……どうしても、来ては貰えないのか?』
『花沢…いや、国王様 申し訳ない』

『そんな呼び方は止めてくれ 牧野、共に学んだ仲じゃないか』
『……君は、もう国王だろ?』

『どうしても、ダメか?』
『すまない…俺には研究所の所長なんて似合わないよ…でも、協力はいくらでもする』


キ~ンコ~ン♪カ~ンコ~ン♪♪

…………い…お………るい……


「お~い、類!起きろっ!!」
「……!!!」

「講義終わってるぞ、教授がすっげぇ睨んでたぞ」
「………ぁ……あの時だっ!!」

「おぉぉ、吃驚した。何だよどうしたんだ?」
「……あの時の子だった……」


ガタッ!!


「は?判んねぇ奴だな、まだ、夢の中か?」
「……………………」

「って、おいっ!何処にいくんだよっ!類!!」
「……司、ほっといてやれよ。昼寝の続きだろ」
「……ちっ」


気が付いたら、あの日彼女に会った場所を目指して走っていた。

………そうだ、あの時のあの子だっ!

道理でどこかで、会った気がしたんだ。
父さん達が難しい話をしている横で、母さんが出してくれたクッキーを嬉しそうに食べてた女の子。

『これ、おいしいよ♪』
『…………』

『あなたもたべる?はい♪』
『……ありがと』

そんな片言の会話しかしなかったけど、
あの笑顔と吸い込まれそうな黒い瞳。

間違いない、彼女だ。



ハァハァ言いながらいつものベンチに向かったら……今日はそこに人影がある。

しかもそれは綺麗な黒髪の後ろ姿。
ひと目で彼女だと判ったから、遠回りしてベンチの後ろ側から近づいて行った。

驚かそうと思った訳でも、悪戯心でもないんだけど……何故かそうしてしまった。
多分、こんなに息を切らして走った自分の姿を見られたくなかったんだと思う……。


「…………なのよ……あはは!」

そこに近づいたら、風に乗って話し声が聞こえた。
誰か居るのかと思ったら「わん!」って声も聞こえてきた。

あの豆柴を膝の上にでも乗せてるのかな?


「……珀、あの人達、海の向こうから来たんだよ?凄いねぇ」

わん♪

「でもさ……王子様だから無理なのよ。私なんて問題外。
こうやってお話するのも本当は奇跡なのよ?」


……ゎん?

「うふふ、あんたには判んないよね……。
いつかはあの人達もこの島から自分たちの国に戻っちゃうんだろうなぁ……当たり前だけど」



……王子様って……俺達の事?
自分じゃ問題外って……どう言う意味?

あの人達って言ってるけど、その中の誰の事を考えてるの?
この島から戻って行ったら……あんたはどう思うの?


「……またあの島で暮らしたいなぁ……。
そうしたらこの島を出ていっても会えるかもしれないでしょ?」


わんっ♪

「うん!きっと珀も気に入るよ?綺麗な島だもん。
お城もね、可愛いんだよ?昔ね、お父さんに連れて行ってもらった事があるの。
そこでお妃様に貰ったクッキー、美味しかったなぁ……だから私も美味しいお菓子を作りたくて練習始めたの。
いつか彼に食べて貰いたくてさ」



クスッ……なんだ。
俺より早く気が付いてたんだ?

じゃあ、さっきの言葉は……そう言う意味だって、自惚れてもいいのかな。


そう思ったら近づいて行く足も何だか浮かれてる。
どうしよう……いきなり抱き締めちゃいそうで怖いんだけど。


「ねぇ、珀……今はお勉強中のはずだけど、急に現れたらどうしよう?
きっと私、真っ赤になって言葉が出ないと思うんだけど。

でも、そんな事ある訳無いか!」


「判んないよ?あるかもしれないよ?」

「そお?でもさぁ………………はっ?」

わんわんっ♪



背中から掛けた言葉に驚いて振り向いた牧野つくし……彼女の瞳を見たらやっぱり俺の中で熱くなるものがあった。

天使の放ったハートの矢……多分この瞬間に俺の胸に飛んで来たと思う。


「……練習したヤツの味見役……俺が引き受けようか?」
「えっ?!あっ……聞いてたの?」

「うん、全部」
「………………うそ」



こうして俺達の恋は始まった。
そして必ず彼女を花沢国へ連れて行く……そう決めたんだ。




続く……と思う。



こんにちは~(´∀`)ノ

今日は2人の?5人の?出逢い編でした~♪
類くんとつくしちゃんは厳密には再会編?
まぁ、いっか!(笑)
いやぁ、こんな出逢いだったんですね~( ´艸`)

というか…( ´艸`)コレ……続く……んでしょうか……?(笑)
その辺も含めて?今後もお楽しみくださいね~♪♪

おつき合いくださりありがとうございました(≧∀≦)ノ



Gipskräuter

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