再会 前編
- 2017/05/16(Tue) -

「あっ。」

自分の目を疑った。英徳を卒業して四年。
一度だって会ったことがないのに、なんでこのタイミングで私はあの人を見つけてしまったんだろう。
遥か前方にいるあの人を…。
気づかれる前に早くここを立ち去らなくちゃ。

頭の中ではそう思うのに、私の心は胸を高鳴らせていた。
久しぶりに見るあの人はあの頃と何も変わらない。

今だけ…。
今、この瞬間だけ…。
あの人をもう一度目に焼きつけるから…。

「えっ?」

今、目があった?
慌てて視線をそらした。

どうしよう?
ただの偶然?

そうだよ。
こんな雑踏の中で気づく訳ないよね?
でも、もうそちらを見る勇気はない。後ろ髪を引かれる思いで歩き出した。



それは講演を終えて、車に戻ろうとしていた時だった。
ふと視線を感じて立ち止まった。

人の視線を集めることは俺にとっては日常茶飯事。どうってこともねぇ。いつもなら気に止めることもねぇはずなのに、この日は違った。

いつもとは違う視線。

それが気になって足を止め、視線の先に目を向けた。そこには人混みの中、身動き一つせず立ち止まりこっちを見ている女の姿。

「牧野…?」

そう思った時には、女は俺に背を向けて歩き出した。

くそっ。
逃がして堪るかっ。

人混みをすり抜けて女を追いかけた。


卒業と同時に姿を眩ました牧野。
あいつらがギャーギャー騒ぎ立てる中、俺は何もしなかった。
あの頃は知らなかったんだ。俺にとってあいつがどんな存在だったのかを…。
その存在の大きさを知ったのはだいぶ後のことだった。

どんないい女といても、どこかであいつと比べてた。
あいつだったら…こうするだろう、こう言うんじゃないか?
気づけば俺の頭ん中は牧野で埋め尽くされていた。
近すぎて分からなかったんだ。いなくなって初めてその存在の大きさに気づいたんだ。


牧野が、今、このタイミングで現れた。俺にとってきっとこれが、あいつを掴まえる最後のチャンスなんだ。

ぜってぇ、逃がさねぇ。



歩いていると急に手首を掴まれた。びっくりしすぎて声も出ない。
けれど反射的に振り向いた。

「牧野…。」

「…西門さん。」

一瞬にして私はその瞳に引き寄せられる。
言葉なんて何も出てこなかった。

この人混みの中、気づいてくれたことがただ嬉しくて泣きそうだった。

けど、分かってる。
この人は何も言わずに姿を消した私を、友達として心配してくれてるだけだって。だから、今度こそ、ちゃんとバイバイしなきゃダメだよね…。

「牧野、お前に会いたかったんだ…。」

えっ?
これは聞き違い?

てっきり怒られるものだと思ってた。
心配かけるなっていつもの調子で…。

空耳?
幻聴?

これは何?



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コメント
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2017/05/16 17:00  | | #[ 編集] |  ▲ top

-yukikoサマ-
コメントありがとです♪

あははー、逃亡しました~。
あっ、よかったんだ?(笑)
じゃあGipも逃亡しようかしら( *´艸`)

今回のつくしちゃんは……天然満載?!かも…です。
総ちゃんは確かに素直っぽい!ですねー。
このあと俺様にへーんしん!!するのかしら(爆)
いつもの如く覚えてないや( ̄▽ ̄;)

続きもお楽しみくださいませ~♪
2017/05/16 20:52  | URL | コメ返信 yukikoサマ #-[ 編集] |  ▲ top


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